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じゃあ、お前はどう考えるのだ!

サラリーマンとしての基礎的能力は訓練によって身につけることができる/文章能力編

<基本作法>

サラリーマンに必要な基礎的な文章能力は比較的簡単に身につけることができる。企画書や提案書をきちんと書けなければ、基本的には出世できないだろうし、部下や業者さんを動かすこともできない。たとえ話下手であっても文章能力がしっかりしていれば、サラリーマンとしてはやっていける。

確かに、Lineやメールを頻繁に使っている割には、入社試験や昇進昇格時のレポート、業務マニュアル、提案書などを読むと小中学生並みの文章が多い。原稿用紙で10枚程度と指定してあっても、4~5枚書くのが青息吐息、よくぞ5枚も書いた、頑張った、という程度の文章能力しかない管理職も多い。

そういう私も文章がうまいかというとそうではない。しかし、小説や脚本を書くわけではないので基本的な作法さえ押さえておけば、サラリーマンとしては十分やっていける。文章を書くための基本的な作法は次の通りだ。

①文章は、極力、短くする。「説明を行う」は「説明する」で良い。

②一つの文章には一つのことしか書かない。

③受動態は、極力、使わない。

④段落が長くなったら、改行を入れるか、箇条書きにする。

以上の①~④を実践するだけも文章は格段に良くなる。受動態(受身形的表現)は使い方によっては、提案書であっても当事者意識の欠如した他人事のような印象を与えかねないので要注意だ。「改善されます」ではなく「改善します」にするということだ。自信のない社員ほど受動態表現が多くなりがちだ。加えて受動態表現が多い文章ほど読みづらくなる。「ボタンがマウスでクリックされるとリストが印刷されます」ではなく「ボタンをマウスでクリックするとリストを印刷します」にする。

箇条書きは文章全体の見通しもよくなり、要点が分かりやすい印象を読み手に与える極めて有効な文章作法だ。箇条書きは多用せよ、である。

引き続き私の経験則を幾つか列挙しておく。

⑤ビジネス文書では敬語や尊敬語は使わない。丁寧な文書に仕上げたかったら、「です」「ます」調で良い。

⑥同義反復は徹底的に排除する(同じことを表現を少し変えて書かない)。

⑦話の飛躍や省略は、極力、避け、丁寧に書き込む(自分とっての常識は、他人にとっては非常識、ということをわきまえる)。

⑧結果、枝葉やディテールが長くなったら、添付資料や巻末資料に追い込み、本文は骨太に仕上げる。添付資料や巻末資料は「お時間のあるときにご覧いただければ」で済ませる。誰も読まなくても、きちんと書いてあるという事実が大切なのだ。

⑨書きあがったら必ず読み返し、部員など第三者の目も通し、誤字脱字を修正しつつ、より分かりやすい表現にする。

⑩提出までに余裕があれば1日以上おいて、再度読み返し、修正して提出する。

最後の⑨⑩が意外とできない社員が多い。誤字脱字はもちろんない方が良いのだが、社内文書であれば、それなりに許容範囲はある。しかし度を越したり、日本語として成立していないおかしな表現の文章をそのまま提出したりすると、自分の書いたこともチェックできないのか、部下に書かせてそのまま提出しているのではないか、と思われるだけだ。

<基本構成>

文書全体の構成は起承転結が基本だろうが、これは少し分かりにくい気がする。ビジネス文書の場合は、実験レポートの構成を参考にすると良い。

1)実験の目的(この文書の目的は何なのか)

2)実験の方法(何をどのようにしたのか、するのか、したいのか)

3)実験の結果(やった結果はどうだったのか、どのような結果が期待できるのか)

4)考察(結論。だから何をなすべきか)

学生時代に実験レポートをさんざん書いてきた社員の文章は、基本、上記の流れになっており読みやすい。そうでないと目的の説明が不十分なまま、自分たちがやったことや、やりたいことから始まるレポートになったりする。「方法」と「結果」あるいは「結果」と「考察」が入れ子になったような構成だと、整理が悪く、読みにくい文章になりやすい。

<内容について>

文書全体の内容は、少し難しいかもしれないが、不必要なことは書かず、書くべきことのみ書く、ということだ。ビジネス文書は自分が知っていることを書くのではなく、相手に伝えるべきこと、伝えたいことを書くのだ。これが基本であるが、これを理解できない社員が極めて多い。

往々にして自分の知っていることを全部書こうとすると(多くの人は書きたがる)、知っていることはだいたいにおいて中途半端なため、支離滅裂な内容の文書になる。私の経験で言うと、このパターンで破綻/自滅する文書が最も多い。破綻/自滅するとは、突っ込みどころ満載の文書になり、実際に多くの突っ込みが入り、最後は書き直しを命じられたり、却下されたりする、ということだ。

自分はこんなことも、あんなことも知っていると思われたい気持ちは誰しも持っているのだが、その感情が露骨に透けて見える文書は要注意だ。なぜなら逆に書き手のレベルが見透かされる、ということになるからだ。感覚的にいうと10を知っていて、2を書くぐらいがちょうど良いのではないか。2しか知らないことを2書くな、ということだ。

私は突っ込まれるのも、面倒な説明も嫌だから、中途半端にしか知らないことや説明しても理解されにくいことは、話題にもならないよう、それなりに工夫してきたつもりだ。たとえば結論まで一気に突っ走るとか、突っ込みの入りそうなテーマを迂回する構成にするとか、分かりやすい部分の説明で全体像を理解できた気にさせるとか・・・これは経験を積むしかない。

そのため一度書いた文書を大幅にカットするのは当たり前にやってきた。最低でも、毎回、自分の書いた文書の2~3割はカットしてきた。2~3割カットするというのは有効な方法だ。間違いなく文書全体が引き締まる。

経営トップは基本的に細かいことは理解できないし、理解したいとも思わない。人は理解できないことを延々と説明されると怒り出すだけだ。年をとるほどその傾向は顕著になる。経営陣もしくは決裁者に対する提案書は目的や意義と費用対効果をしっかりと書き込み、あとは分かりやすい内容を放り込んで文書全体の体裁を整えるのが基本だ。

承認を得るためのテクニックとして、相手の知らない新しい専門用語を二つか三つ、分かりやすく解説してあげて、少し賢くなった気分を味わわせてあげる方法がある。これはかなり有効なテクニックだ。

<頭の中の整理が基本>

ときどき、極めて整理が悪く、何を言いたいのかまったく分からない文書に遭遇する。書いた社員と話すと、上記のテクニック以前に書き手の頭の中が整理できていないことが多い。書き手の頭の中の整理の悪さ、混乱ぶり、曖昧さなどが、そのままストレートに文書に反映しているのだ。何を聞いても「それもある」「あれもある」と肯定するばかりで、本人は何を主張したいのかがまったく見えない。

確かに会社の中のこととはいえ、割り切れないことも多いし、ブラスもあればマイナスもあることが大半だ。それを整理し、一つの方向性を示すのは、ある意味、確信犯的行為でもある。この視点を持って、自分の頭の中をきちんと整理することが大切だ。もちろん文書を書くことで頭の中が整理できることもある。

自分が整理できないことは、もちろん誰にも伝わらないし理解もされない。文書作成において最も基本的なことである。