I don't think so !

じゃあ、お前はどう考えるのだ!

海王丸と富山湾の曇り空

サラリーマンとしての基礎的能力は訓練によって身につけることができる/思考能力編④

<松竹梅型思考法―――選択肢を用意する処世術>

松竹梅型思考法とは、常に、松竹梅の3案を考える、ということだ。この案しかない、この方法しかない、この道しかないというのは、だいたいにおいて怪しいし、危うい。パソコンを購入するときでも、下位機種、中位機種、上位機種の3つの選択肢が必ず用意されている。にもかかわらず「上位機種を100台購入します」とだけ提案されてしまうと、経営陣としてももっとコストダウンできないのか、と言わざるを得ない。

なぜ、メーカーは3タイプのモデルを提示しているのかに気づかなければならない。人は選択肢が与えられれば、その選択肢の中から選択しようとする。もしメーカーが一つの選択肢しか用意しなければ、人は他メーカーの製品を選択肢にしようとする。人とはそういうものなのだ。

マーケティング的に言えば、売りたいものを真ん中に据えよ、となる。パソコンも中位機種が最も売れる。もし本当に上位機種100台が必須なのであれば、中位機種、上位機種、オプションを付加した上位機種もしくは高額なワークステーションを提案し、上位機種を推薦する方法を採るべきだ。だから松竹梅型の提案は、提案を通しやすくするサラリーマンとしての処世術でもある。大切なことは他の案も検討した、という事実だ。

松竹梅型の提案や思考は物品の購入に限らない。

営業、製品開発、製造ラインの構築、システム開発などすべての業務に共通することだ。システム開発では同一要件であってもSEが10人いたら10通りの設計が出てくるし、プログラマーが10人いれば10通りのプログラムができあがる。業者が10社あれば、10通りの見積もりが出てくる。これはどういうことか。簡単である。どのような仕事であれ正解は一つではない、ということだ。最終的には同じ結果を得る、もしくは正解を手にすることができても、そこに至るまでには幾通りもの方法やルートがあるということだ。そこにあるのは方法やルートの優劣である。

ということは何らかの提案を考えたとき、必ずその提案より良い提案と悪い提案がある、ということになる。だから常に自らの提案をより良くするために3案ぐらいは考えるべきなのだ。

ところが最初に思いついた案以外に考えない、もしくは考えることのできない社員が多い。もし社員がこの案しかないと言ってきた場合は、より良い提案があると思って却下すればよい。

松竹梅型思考法の訓練も極めて簡単だ。最初に思いついた案をそのまま素直に書き出す。次にそれより、必ずより良い案があると思うことだ。最初の案以外に考えることができないのは、自らがその案や考えに囚われてしまっているからだ。その場合は、時間をおくなどして頭をリフレッシュするしかない。リフレッシュの仕方は人それぞれ工夫すればよいことだ。

これは自分が考えたことを客観視する、あるいは自己相対化するということだ。私の場合は自分の考えたことをポンと外に放り出すという感覚だ。これは誰にでもできることだ。なぜなら人間は、本来、そのような能力が備わっているからだ。

食事をしている自分、喜んだり悲しんだりしている自分、人を笑わせようとしている自分、何かを考えている自分を人間は別の自分に意識させることができる。女性は泣いている自分がかわいそうだと同情してもっと泣くらしい。

このように人間は自分が考えたこと、書いたことを見る別の自分を立てることができる。自分の魂が身体を抜け出して自分を見る幽体離脱のようなものだ。幽体離脱では天井から寝ている自分を見下ろす感覚らしい。自分自信や自分が考えたことを見下ろすのは、とても良いことだ。幽体離脱は霊的現象ではなく、人間を賢くさせるすばらしい能力なのかもしれない。人は他人と争ったり、他人をバカにしたりしている自分をもっと見下ろすべきだ。あっ、「おマエのことだ」と言っている自分がいる。

いずれにせよ慣れさえすれば自分が考えたことを比較的短い時間で相対化できるようになる。いま考えた案より、より良い案があると思い、それを見下ろして、より良い案を考えるだけだ。簡単なことだ。