I don't think so !

じゃあ、お前はどう考えるのだ!

海王丸と富山湾の曇り空

サラリーマンとしての基礎的能力は訓練によって身につけることができる/思考能力編⑤

<抽象化能力―――教訓を引き出す思考術>

いよいよ私なりに考えるサラリーマンに必要な思考力能力=考える力の最後だ。

抽象という言葉を手元の電子辞書を叩くと「事物や表象からある性質・要素・共通性を引き出して把握すること。また、把握して一般的な概念をつくること。」(明鏡国語辞典)とある。

つまり仕事や仕事の中でのさまざまな出来事から共通性を引き出すこと、引き出したことから一般的な概念をつくる能力、すなわち教訓を引き出す能力が抽象化能力である。

「そのミスは以前もやったではないか。同じミスを繰り返すな」と言ってもキョトンとしている社員がときどきいる。最初はキョトンとしている理由が分からなかったが、40年もサラリーマンをやっているとだんだんと分かってくる。以前やった仕事と今回やった仕事は異なる仕事なのだ。異なる仕事で発生したミスは異なるミスでしかないし、だからそもそも以前やった仕事が何の仕事を指しているのかも分からない。だからキョトンなのである。そこに悪気も誤魔化そうという気持ちもまったくない。

確かに教訓を引き出すのは難しいことかもしれない。ヘーゲルも次のようなことを書いていた気がする。

「よく歴史から教訓を学べと言うが、歴史を学んで分かることは、いかに大衆は歴史から教訓を学ばないか、ということだけだ」。

どの本に書いてあったのか覚えていないが(内容的には「歴史哲学」か)、ヘーゲルが単なる皮肉で書いたのか、本当にそう思っていたのかは不明だが、昨今の国内外の情勢を見る限りでは、本気でそう書いたのだろうと勝手に思っている。

それはさておき、サラリーマンが少なくとも自分の仕事の経験や出来事から教訓を学べないようでは会社としては困るのである。できれば他の社員のミスやトラブルからも教訓を学んで欲しいと願っている。

しかし幸いなことに共通性を引き出す(抽象化する)ことは、それほど難しいことではない。

4、6、8、10

の公約数(共通性)を"2"と答えることができれば、その人は間違いなく抽象化能力がある。どう見ても"4、6、8、10"の数字の形状には"2"の形はないのだが、それでも”2”と答えることがきるのは抽象化能力があるからだ。"2"と答えられなかった人は、これ以上読む必要はない。

次に、200m+4Km=4.2Kmと答えることができれば抽象化能力に問題はないし、

リンゴ2個+バナナ4本=くだもの6つ、と答えることができる人は申し分のない抽象化能力を有している。分からなかった人は覚えておけばよい。つまり物事には必ず共通性がある、ということだ。"4、5、9、10"の共通性は数字だ。整数でも良い。

このことを素朴に信じて、普段から物事の共通性を考えるようにすれば抽象化能力は自ずと身につく。

A君、B君、C子さんの共通性は”腹黒い”とか、A社、B社、C社の仕事の共通性は”担当者が口うるさい”とかである。サラリーマンが共通性を考えるときに払う注意は、行動に結びつくような共通性を考えることだけだ。

A君、B君、C子さんの共通性を”人間”としてしまうと行動には結びつきにくい。”腹黒い”とするからこそ話すときは気をつけよう、”口うるさい”から仕事の進捗状況をこまめにメールしようとなる。この「話すときは気をつける」、「こまめにメールする」が教訓に他ならない。共通性から行動を導き出すのが教訓化である。

共通性を考えるクセが身につけば、総務部、製造部、営業部の仕事の共通性も、以前やったミスと今回やったミスも、システム部のトラブルと経理部のトラブルの共通性も考えることができるようになる。

ITの世界の抽象化も同じことだ。オブジェクト指向、参照モデル、外部関数、論理名など多くのIT用語が共通化を意味している。多くの人が簡単に使えるよう共通化すれば開発効率が向上する、ということだ。

物事には、すべて共通性がある、それだけだ。