I don't think so !

じゃあ、お前はどう考えるのだ!

サラリーマンとしての基礎的能力は訓練によって身につけることができる/コミュニケーション能力編

確かに会社でもコミュニケーション不足やその能力不足を指摘する声は多い。人事部門ではコミュニケーション能力の強化を社員教育の目標にし、自己申告書では若手社員がコミュニケーション不足を嘆き、飲み会などでも困っていることはないかと聞くとコミュニケーション不足と答える。いやはやコミュニケーション不足のオンパレードである。しかし、会社は回っている・・・。

私は40年のサラリーマン人生を振り返っても、コミュニケーション不足の問題をそれほど感じたことはない。「それぐらい連絡しておけよ」と言ったことは何度もあるが、だいたいは業務ごとの連絡網の整備や確認で終わってきた。どのようなトラブルであればすぐに報告し、どのようなトラブルであれば翌日対応でも良いのか、誰に報告するのかなどを決めてきた。決めたことを守らなかったら、守らなかったことに対しては怒ってきたが、コミュニケーション不足という漠然とした内容で怒ったことはないはずだ。

立場上、「ホウレンソウ」が大事だと強調したことはあるが、自分が「ホウレンソウ」ができているのかと考えると自信がないため、強調してみただけで、あまり考えないようにしてきた。

コミュニケーション不足についてよくよく聞いてみると幾つかのパターンに分かれるようだ。

<若手社員が訴えるコミュニケーション不足>

若手社員の言うコミュニケーション不足は、上司が仕事の内容や意義をきちんと教えてくれないことを言っているケースが多い。しかし、これは無理な話である。人事異動、本人の能力、仕事内容の変化などがあって、多くの場合、上司は若手社員に担当させている仕事の内容をきちんと理解していない。私も、過去、何人もの部下や同僚はいたが、彼らが休んだら私が代わって仕事ができたかと考えると、打ち合わせぐらいには出たが、具体的な仕事を代わってしたことは極めて少ない。そんなものだ。

次に多いのが他部門や他の社員の仕事内容が分からない、だからコミュニケーション不足だ、と言うのだ。これも無理だ。同様に他部門や他の社員の仕事内容をきちんと理解してる上司などほとんどいない。

つまり若手社員のいうコミュニケーション不足とは上司が無能力であることを言っているにすぎないのだが、それは当たり前のことであり、そのことに気づいていないか、気づいていないふりをしているのかのいずれかだろう。すべての問題を上司に責任転嫁できるからだ。

若手社員は本当に仕事の内容を知りたければ、職制としての上司ではなく実際に仕事の内容を知っている社員をつかまえて聞いたり、他部門の仕事の内容を知りたければ、他部門に行って聞いてくればよい。それだけである。上司は万能ではないと理解して動くだけである。待っていても、黙っていても誰も教えてくれない。いくら嘆いても物事は進展しない。

私は自分の仕事には関係のない部署の仕事内容を知りたいと思ったことはあまりない。会社人間としては知っていた方が良いのかもしれないが、とにかく知らなくても良いことは知りたくないのだ。性格かもしれないが、知らなくても気にならなかった。それでも社内会議に何年も出席し、何年も酒を飲んでいれば、自ずと各部の仕事内容は見えてくるものだ。

<中継社員が訴えるコミュニケーション不足>

次に中堅社員のいうコミュニケーション不足とは、若手社員が相談してこない、経営者や管理者が会社や部の方針、方向性を説明してくれないことを嘆いているケースが多い。これも無理な話だ。若手社員は何を相談してよいのかが分からないし、相談したいこともそれほど持ち合わせていない。教えてもらいたいことが、それなりにあるだけだろう。

会社や自部門の方針を明確に説明できる経営者や管理者も皆無に等しい。せいぜい説明できるのは目の前の課題だけだ。将来を見通し、会社や自部門の方針をきちんと説明できる経営者や管理者ばかりだったら会社はもっと発展し、もっとたくさん給料をもらっていたはずだ。そんな会社は少ないのではないか。

私自身、40年のサラリーマン人生でやってきたのは目の前の課題や必要だと思った課題をこなしてきただけだ。その課題を並べて部の方針だ、会社の方針だともっともらしく言ってきただけだ。思いつく課題をパッパッパッと並べて、適当に社内外の情勢を放り込めば方針の一丁上がり、という具合だ。

<管理者が訴えるコミュニケーション不足>

管理者のいうコミュニケーション不足で多いのは、すぐに報告がない、という嘆きだろう。何でもかんでもすぐに報告する必要はないと思うのだが、とにかく何でもかんでもすぐに知りたがる管理者や経営陣がいる。私の経験からするとそのような管理者や経営陣に限って実は仕事の内容を理解できていないケースが多い。不安だから「ただちに報告せよ」と言っているだけだ。報告が上がっても内容は理解できないし、緊急性も分からないから報告がないと思っているケースが大半だ。社員もバカではないから、本当に大変なことはすぐに報告しているし、責任もとりたくないから、大変なことでなてくも報告しているのだ。

結局のところ、コミュニケーション不足とは、各階層における能力不足にほかならないのだが、その解消は不可能だと思うべきなのだ。つまりそのような意味でのコミュニケーション不足は当たり前のことだ。放っておけばよい。

さらにつけ加えるならば、社内の問題点を聞かれて「コミュニケーション不足です」と答えない方がサラリーマンとしては身のためだ。実際に社員からコミュニケーション不足と言われて、次のように言い放った社長がいる。

「そんなことオレに言われても困る。お前らでなんとかしろ」。

まったく、その通りだ。コミュニケーション不足とは「そんなこと」に過ぎないのだ。「お前らでなんとか」すべきことなのだ。

<人の性格は直せないし、直す必要もない>

コミュニケーション能力の問題を性格に起因するものとして考えられたり、語られたりすることも良くある。

もちろん私から見てもTPO(Time:時、Place:場所、Occasion:状況)をわきまえない社員はいる。KYの(空気が読めない)社員はいるし、KYの(危険予知ができずにつまづきそうなところできちんとつまづく)社員もいる。

ところがTPOをわきまえないとかKYだとか声高に叫ぶ社員ほど、私からするとTPOをわきまえず、KYのようにしか見えない。大多数の社員は、お互いの性格を知った上で、きちんと対応しているからだ。たとえ変だと思っても大声で叫んだり、言いふらしたりはしない。諦めているのかもしれないが、人間とはそういうものだということを、少なくとも会社の中ではわきまえている。

だから性格的なことを指摘されても、気になっても、無視すべきである。以前読んだ本に「人間、25歳を過ぎたら変わらない」とあった。そうだろうなと思ったので、今でも良く覚えている。多かれ少なかれ、人は他人と異なっている点があるものだ。それが性格だ。そう簡単に変わるものでもない。

自分とは性格が著しく異なっていると思うのは、思う人の勝手や都合であって、著しく異なるという絶対的な尺度はないのだ。そう思う人の方が著しく異なっているのかもしれない。

性格的なことは思い悩んでも、気にしても仕方がなく、ただ受け入れるだけだ。

<コミュニケーション能力とは仕事の整理力>

会社におけるコミュニケーション能力とは、突き詰めると仕事の話しができるかどうかだ。ゴルフや二次会のカラオケを断った社員がいても、コミュニケーション能力がないとは誰も思わない。酒の席上の話が面白くなくても、ずっと黙っていてもコミュニケーション能力がないとも思わない。逆に酒の席上では賑やかでも、社内で仕事の話ができない社員や管理職はコミュニケーション能力がないと言われる。

とにかく仕事の話がきちんとできれば、サラリーマンとしてのコミュニケーション能力は合格だ。

仕事の話というのは、だいだい次の3点に集約される。

①これからの業務課題

②いま担当している仕事の進め方

③いま担当している仕事を進める上での注意点

この3つの説明がきちんとできる社員は、安心して部下をつけられるし、管理職にもなれる。

きちんと説明ができるとは、整理がきちんとできているか、ということに尽きる。整理がうまくできていれば、たとえ話下手であっても、説明は理解される。説明の下手な社員は確かに多い。しかし下手な説明を何度も聞いていると、整理の仕方が下手なのだということが分かる。整理の仕方が下手だから、話があちらこちら飛んで、日本語で話しているのに、さっぱり内容を理解できない。

整理の仕方をうまくする方法は簡単だ。文章化することだ。ワープロの自動段落番号機能を使って書き出してみることだ。

①これからの業務課題

これからの業務課題とは仕事に対する問題意識ということだ。問題意識の多くは業務改善である。たとえベンチャー企業といえども新事業の立ち上げや新製品の開発を担当する社員は極めて少ない。

サラリーマンは問題意識が常に問われる。ただ言われたことをこなしている社員ほど問題意識は少ないが、たとえ少なくても思いつくままに書き出す。書き出すと不思議と業務課題や問題意識は増える。これも文章化する効果だ。記憶はすぐに消えるが文章は残るからだ。だから内容が次々と連鎖的に広がり豊かになる。

次に優先順位の高いものから並べる。優先順位を高いものから並べることが整理することなのだ。業務課題は減ることもあるが増えることの方が多い。増えるたびにメンテナンスし、優先順位を振り直すことが重要だ。

このような整理を日常的に行っていれば、突然、職場の問題や課題を問われても、優先順位の高いものから系統立てて説明できるようになる。

②いま担当している仕事の進め方

最終的にはマニュアル化することだ。最初はワープロで思いつくままに仕事の進め方を箇条書きにする。箇条書きが終了したら、順番を確認しながら不足を補ったり、仕事の進め方にしたがって入れ替えたりする。項目が多くなったら見出しをつけ、グルーピングする。これに解説を付加すれば業務マニュアルの完成だ。

体系だった業務マニュアルが整備されている会社であれば、通常、社員はマニュアル化されている業務そのものではなく、作業員の管理や教育などが中心業務となる。社員はマニュアル化されていないかマニュアル化が不完全な仕事を担当する。だから社員である以上、担当している仕事のマニュアル化は必要だ。

非定型的な仕事が多くても同じである。非定型的な仕事が多いからマニュアル化できないという話は良く聞くが、何か毎日やっている以上、やっていることを言語化できないことはない。

③いま担当している仕事の進め方の注意点

かならず仕事には注意点や要となるポイントがある。それを同じように箇条書きにする。箇条書きを終了したら、仕事の進め方順に並べ替える。これがチェックリストになる。マニュアルとチェックリストを混同しているケースをときどき見るが、これらはまったくの別物である。チェックリストは使うためのものであり、マニュアルは学習もしくは参照するためのものだ。マニュアルのようなチェックリストは使いづらいだけだ。

以上、簡単なようだが、やっていることを言語化するのは慣れるまでが大変だ。少し難しいかもしれない。しかし慣れれば、社内で流通する言葉は限られているため、思いのほか簡単にできるようになる。いずれにせよ仕事の内容を言語化し、並べ替えたりグルーピング化したりすると間違いなく仕事の整理がうまくなり、説明も分かりやすくなる。すなわちコミュニケーション能力は格段に向上する。

サラリーマンとしてのコミュニケーション能力はこれで問題ない。