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海王丸と富山湾の曇り空

原発予算、5000億円から1兆円は誤差のうち?(改訂版)

先月、青森県六ケ所村で建設を進めている再処理工場の予算についてのニュースがマスコミを駆け巡った。たとえば、テレ朝ニュースは「電気料金に反映?再処理工場7500億円増正式公表せず」(2017/07/16)と報じた

news.tv-asahi.co.jp

この7500億円という数字は、使用済燃料再処理機構(青森市)が公表した「再処理等の事業費について」(2017年7月)に掲載されている。以下はその抜粋である。<再処理関係事業費>→<設備投資>→<新規制基準>に記載されている0.75が、その7500億円である。以下の資料をじっと眺めているといろいろなことを考えさせられる。

 <再処理関係事業費> (単位:兆円)
■設備投資
 初期施設 2.2
 新規制基準 0.75  新規制基準審査の進捗に伴い、見直し
 その他設備投資 1.6
■操業費等 7.4 
■廃止措置 1.6
小計 13.5
■経営効率化 ▲0.5
計 13.0
■返還廃棄物管理、廃棄物輸送・処分  0.9
合計 13.9

<MOX燃料加工事業費> (単位:兆円)

■設備投資
 初期施設 0.4
 その他設備投資 0.3
■操業費等  1.5
■廃止措置  0.1
合計 2.3

 <7500億円の追加費用を1年で使い切る無茶苦茶な計画>

まず、いつの間にか追加された7500億円という金額からしてデタラメとしか言いようのない計画である。再処理工場は青森県六ケ所村で過去20年以上にわたって建設を続け、未だ完成に至らない施設だが、完成予定は来年の上期だそうだ。

「現在、アクティブ試験(使用済燃料を用いた試験)を実施しており、2018年度上期のしゅん工に向けて、最終的な安全機能や機器設備の性能を確認しています。」(2017年9月時点の日本原燃ホームページ)

7500億円の追加を「使用済燃料再処理機構」が公表したのは2017年7月、それに対して再処理機構に事業提案を行った日本原燃は今もって1年後の完成予定を目指しているというのだ。

7500億円の追加投資を除外すると再処理関係の「設備投資」は上記資料によれば3.8兆円。これは20年以上かけて投じてきた金額だ。とすると7500億円もの金額を1年余りで使い切って施設を完成させるということになるが、そんな計画は始めから実現不可能ではないか。事実、再処理施設の予定通りの完成は無理だとする報道もあるが、極めて当然のことだろう。

日本原燃は7500億円に見合った内容で施設の完成予定を再度延期するのか、それとも別の用途なのか・・・いずれにせよ7500億円という巨額な資金は原子力村や原発政策の闇を照らすものとして、引き続き注目していく必要がある。

<ヒトをバカにした原発予算>

それにしても原発本体ではなく関連施設の予算にもかかわらず総事業費16.2兆円。改めて原発には巨額の資金が必要だということが分かる。しかも公表されたのは1兆円単位という何とも大雑把な予算である。追加予算の0.75を除くと、すべて小数点以下1桁単位、つまり1000億円単位となっている。

この手の予算数字は四捨五入しているかというと、公表資料には記載されていないが(それも問題)、往々にして切り上げということもある。予算獲得が目的だし、予算を超えてしまって後から文句を言われることを嫌って切り上げるのだ。
もし切り上げているとしたら1010億円であっても2000億円(資料上は0.2)と記載していることになり、1つの費用項目につき最大1000億円近い誤差を含めることができる。四捨五入しているとしても最大500億円の誤差だ。

再処理関係事業で「新規制基準」の費用7500億円を除くと6つ費用項目があり、MOX燃料加工事業関係で4つ、計10の1000億円単位の費用項目がある。とするとこの公表数字には最大で5000億円から1兆円の誤差を含めることが可能である。
しかもこの数字を公表した資料の中で、事業費の見直しや再算定を行った結果、再処理関係事業で210億円減額して総事業費13.9兆円、MOX燃料加工事業関係で50億円減額して2.3兆円にしたと自画自賛している。

なんと0.15%と0.2%の減額である。銀行から借りる住宅ローンの金利値下じゃあるまいし、少なくとも私の会社で業者さんに減額を依頼して、最大限努力して0.2%減額してきましたと自慢げに再見積もりを持って来たら、即刻、出入り禁止にするだろう。
それとも私の会社が大雑把であって、7500億円を公表しなかった再処理機構は緻密な予算管理を行っていると強弁するのだろうか。このような感覚の機構に予算管理を任せておいて、はたして大丈夫なのだろうか。それともこの感覚が私たちの税金を使う側の一般的な感覚なのだろうか。

210億円も50億円も再処理機構からすると誤差以下のゴミのレベルの金額であることは間違いない。しかしそのようにでも記載しないと、世間の目はうるさく、文句をつけられそうだから減額したと称しているのだろうが、あまりにも浅はかである。これこそ典型的なやぶ蛇だろう。

もし210億円や50億円の減額が正統な根拠に基づくものであると主張するのならば、予算数字を1000億円単位ではなく10億円単位で記載して公表するのが筋ではないか。そうしなければ本当に210億円や50億円を減額したのか、あるいは減額できたのかを誰も確認することができない。
それともこの誤差こそが原子力村の錬金術もしくは打ち出の小槌のカラクリなのかもしれない。この誤差の範囲に群がる企業や政治家、官僚は多そうだ。

<巨額資金の使い道は「核燃料サイクル」の実現>

予算の組み方や金銭感覚ばかりでなく、その使い道も問題が多い。
「再処理関係事業費」と「MOX燃料加工事業費」は政府が推進してきた「核燃料サイクル」の実現に必要な中心的な施設の建設費と稼働後の運用費である。上記資料の設備投資が初期の建設費であり、それ以外が運用費と考えていいだろう。

核燃料サイクル」とは原発で使用したウラン燃料を再利用する計画のことだ。日本の原発で使用しているウラン燃料は100%輸入に頼っており、しかもウラン鉱山や精錬工場は寡占市場になっている。つまり世界的に限られた数しかなく、ひとたびどこかで事故が発生すると輸入価格は原油なみに大きく変動する。事実、過去、大きく変動してきた。加えて中国やインドなどが原発建設を積極的に進めており、ウラン資源の争奪戦も予想されている。

しかし、輸入品をリサイクルするのであれば、携帯、スマホ、パソコン内のレアメタルと同じで、国内資源と考えることができる。だから政府も使用済みウラン燃料を明確に「国産のエネルギー資源」と位置づけ「核燃料サイクル」を国策として積極的に推進してきた。

<再処理工場は工事難航、完成予定が20年遅れても稼働せず>

政府が進める「核燃料サイクル」には二つのサイクルがある。既存の原発を中心に核燃料を循環させるサイクルと高速増殖炉を中心にしたサイクルである。
二つのサイクルに共通する施設が再処理工場である。
再処理工場は一度使用したウラン燃料から、

①燃焼して残ったウラン235 
核分裂で新たに生成されたプルトニウム239
核分裂で新たに生成された核分裂生成物質

を分離するための施設である。
ウラン235プルトニウム239はかき集めてリサイクル燃料として既存の原発高速増殖炉で使用し、核分裂生成物質は極めて有害な高レベル放射性廃棄物として処理する。

青森県六ケ所村で建設を進めている使用済みウラン燃料の再処理工場は、当初、1997年の完成予定、建設費7600億円ということで着手されたものだ。しかし、実際は完成予定が20回以上延期され、それにつれて予算も徐々に膨れ上がり、上記資料にあるように当初の完成予定から20年たった2017年7月時点で、再処理工場だけで2兆9500億円、その他設備で1兆6000億円というとてつもない金額になっている。アベノミクスのインフレ政策も、ここでは大成功を収めているようだ、ハイパーインフレの再処理工場建設費用だ。

再処理工場の工事が難航しているのは、高レベルの放射性物質を扱うことの難しさに加え、日本は地震大国でもあるため施設全体の耐震基準が他国に比べて厳しいためでもあるのだろう。
しかし3兆円投じて20年たっても完成できない施設は、そもそも今後も完成できない、と考えるべきではないか。

設備の中には、当然、5年や10年で交換しなければならないものもある。我が家の家電製品やガスコンロは壊れるまで使っているが、メーカは7~8年が交換時期だという。ガス給湯器は10年過ぎたので交換しろとうるさい。しかし原発施設では壊れるまで使われたら困るのだ。

再処理工場の事故で多いのが廃液や溶液、洗浄水など何らかの液体の漏えいである。

放射性物質を含む低レベル濃縮廃液」、「硝酸ウラナス溶液」、「放射性物質を含む洗浄水」、「作動油」、「高レベル放射性廃液」・・・いずれも再処理工場の建設過程で漏えいした液体である。

たとえ設備が壊れなくても、ネジが緩んだり、接合部が劣化して液体がポタポタと漏れただけでも工事は長期間にわたって中断し、修理に追われる。日本は震度3や4の弱い地震が頻繁にあり、巨大な設備全体がゆさゆさと揺さぶられるのだ。身体に感じなくても施設に振動を与える地震の発生回数は限りなく多い。だから液体の漏えい事故が頻発するのは当然だろう。

とすると試験運転中に設備が交換時期を迎える、液体漏えいなどのトラブルが発生し原因究明や修理をやっている間に別の設備が交換時期を迎える、この繰り返しになるのは容易に想像がつく。建設着手から20年以上経過しているということは、そういうことなのだろう。「核燃料サイクル」を回す前に設備の交換と修理の泥沼サイクルに陥っているのではないか。特に原発関連のトラブルは放射能汚染がつきまとうため原因究明と対処に時間がかかる。高速増殖炉もんじゅ」は冷却材漏れの修復に15年もかかったほどだ。
しかし「核燃料サイクル」は国策だから再処理工場が完成できないとは言えない。結果、巨額の資金を燃料にした幻想の「核燃料サイクル」が回り続けているのが実態ではないだろうか。それとも適当な時期にアリバイ工作的な試験運転をして「再処理工場稼働」と発表し、問題の先送りを続けるのだろうか。

誰が、いつ、そのサイクルすなわち悪循環を断ち切るのか、そのような問題として再処理工場の建設問題を捉えるべき時期ではないか。

<再処理施設が完成しても既存原発核燃料サイクルは回らない>

もし再処理施設が完成すれば核燃料サイクルは回るのだろうか。少なくとも既存の原発では回ったとしても1~2回が限度と言われている。ウラン燃料を使用すると核分裂の過程で、既存の原発の分裂効率を低下させる不純物が生成され、この不純物は分離できずに再処理しても残ってしまう。だから再利用可能は1~2回というのだ。1~2回の再利用で核燃料サイクルが回ったと胸を張って言えるのだろうか。

ウラン燃料の再利用は、使用して量が減ってしまったウラン235を再度濃縮してウラン燃料をつくる方法とウラン燃料を使用する過程で新たに発生するプルトニウム239を濃縮してプルトニウム燃料をつくる方法がある。いずれも既存の原発で利用可能だが、再処理工場や濃縮工場、高レベル放射線廃棄物の管理施設などが必要であり、施設の建設や維持に巨額の費用がかかる。しかも再処理するためには放射線量を減らす冷却期間と再利用できるだけの量を確保するための蓄積期間が必要なため、リサイクル燃料の製造コストは最初に輸入するウラン燃料の2~4倍もしくはそれ以上かかると言われている。それだけのコストをかけても1~2回しか再利用できないのであれば、既存原発核燃料サイクルは経済的には完全に破綻していると言えるだろう。

海外では、そんなにリサイクルコストが高いのであれば、再利用せずに埋めてしまおう、というのが主流になっている。

高速増殖炉核燃料サイクルは1兆円投じたものの「もんじゅ」の失敗で破綻>

既存原発核燃料サイクルがそのような状況だから、政府が推進する核燃料サイクルの本命は高速増殖炉サイクルなのだ。

プルトニウム239で製造するリサイクル燃料をMOX燃料というが、既存の原発では1~2回しか再利用できない。それに対して高速増殖炉サイクルは何回も再利用できるそうだ。
高速増殖炉プルトニウムの割合を高めたMOX燃料を使用するが、既存の原発より高温で反応させるため、原発の燃焼効率を下げる生成物も燃焼させてしまう。だから何回も再利用できる、というのだ。

しかも高速増殖炉は、「理論的」には燃料として使用したプルトニウムの量を上回るプルトニウムを新たに生成するとされる。たとえばガソリン1リットルを消費して自動車を10km走らせるとガソリンが1.2~1.5リットル抽出できる廃棄物を出すというのだ。そんなバカなと思われるかもしれないが、高速増殖炉の世界はそうらしい(※)。そのため高速増殖炉は夢の原子炉、魔法の原子炉、これが実現すれば日本のエネルギー問題は一挙に解決すると言われ、世界各国でも積極的に研究が進められてきた。

※「理論的」という言葉には注意が必要だし、ガソリンを1.2~1.5リットル抽出するのに、ガソリン2リットル以上のコスト(処理時間も含め)がかかるようでは問題だろうが、その辺りの事情については私の理解不足である。

日本における高速増殖炉サイクル推進の中心に位置づけられていたのが「もんじゅ」(福井県敦賀市)だった。しかし1995年に核分裂で発生する熱を伝えるナトリウム(既存の原発では水を使用)の漏えい事故を起こし、2010年、15年かけてようやく運転再開にこぎつけた途端、今度は燃料を交換するクレーン装置を原子炉容器内に落下させ、再度、運転が停止した。

原子力規制委員会が「もんじゅ」の実態調査に乗り出し、2013年に「もんじゅ」の運転準備中止命令、2015年に「もんじゅ」の運営主体である日本原子力研究開発機構に対して運転能力なしと政府に勧告、結局、政府も「もんじゅ」の高額な維持費用に対する批判もあって2016年に「もんじゅ廃炉の決定に追い込まれた。1兆円も投じて冷却材の漏洩とクレーン落下で廃炉とは、これこそ原発推進の最大のリスクだろう。

それにしても政府の関連機関から運転の準備もするな、運転の能力もないと断罪されるようなところが、日本の原発政策の一翼を担ってきたのだからとても怖い話だ。あまりにも無責任、無能力な組織だったのだろう。
政府が推し進めてきた核燃料サイクルだったが、既存原発のサイクルは経済的に破綻しているようだし、高速増殖炉サイクルはナトリウムの泡となって消えつつある。

<ロシアや中国が積極的に取り組む高速増殖炉サイクル>

一方で、高速増殖炉は欧米先進国はほぼ撤退しているものの、ロシアは昨年実用化させており、中国も国産とロシアからの輸入によるハイブリッド方式で数年後の実用化を目指している。高速増殖炉の持つ夢のような技術的可能性の大きさと、ロシアや中国には負けたくないという国家主義的な意識から、その推進を強く求める声も大きい。
しかし「もんじゅ」の失敗に関する適切な情報公開や納得の得られるきちんとした原因究明や反省、総括がなされない限り、単にロシアや中国には負けたくないという単純な意識で再スタートすると、これまで同様、国民から集めた税金や電気代を失敗のサイクルに放り込むだけだろう。

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福島原発事故では原発本体が巨大地震にやられたが、再処理工場のような関連施設ですら地震大国の日本では工事がままならない状態に追い込まれている。しかもそこに極めていい加減な形で巨額の税金や電気代が投入されている。

福島原発事故の処理費用も昨年末に11兆円から21兆円に見直されたが、その金額は過去の例を持ち出すまでもなく、どんどん膨らんでいくのは間違いない。溶け落ちた燃料デブリの取り出し方法も、取り出した燃料デブリをどこで、どのように処理するのかも決まっていないのだ。核心となる重要なことが決まっていない中で出された21兆円という金額は出す側にとって都合の良い数字に過ぎないのは当然のことだ。例によって批判を受けにくい低めの予算なのだ。これから華々しい追加予算のオンパレードを国民は見せられることになるだろう。

東京電力は国有化同然だし、原発政策の片棒を担いだ東芝はつぶれかかっている。東芝再生の道は、政府が投じる巨額な原発予算しかないのかもしれない。

それでも日本政府は、ベースロード電源として原発政策を維持し、原子力村の札束燃料サイクルを回し続けていくのだろうか。